「プロセス」より「結果」を求められて育った子が、社会で行き詰まるのはなぜか?

みなさん、こんにちは。安里三矢子です。

前回は、厳しい現実と豊かな希望の狭間にある沖縄を、「課題先進地」ではなく「問い先進地」として捉え直し、この島に生きる誇りについてお話ししました。

コラム第5弾となる今回は、少し視点を変えて、保護者や教育関係者など、子どもに関わる多くの大人が心の奥底に抱えている「ある思い込み」について考えてみたいと思います。

「どの子にも、将来は絶対に幸せになってほしい」

これは、親であっても教師であっても、子どもに関わるすべての大人たちが抱く、偽りない共通の願いです。

そして私たちは、その深い愛情や責任感ゆえに、
「少しでもより良い学校に行き、より良い仕事に就くことこそが、この子が将来幸せになる確率を確実に上げてくれるはずだ」と、心のどこかで思い込んでいないでしょうか。

子どもの幸せを強く願うからこそ、私たちは無意識のうちに、子どもが悩みながら試行錯誤して遠回りする「プロセス」を待つことができず、テストの点数や学歴といった目に見える「結果(成果)」を出すことに重きを置いて接してしまいがちです。
失敗しないための最短距離を歩ませることこそが、大人としての“大正解”だと信じているからです。

しかし、予測不能な時代を前に、このまま「プロセスよりも結果を出すこと」に重きを置き続けて良いのでしょうか。
私たちがどう子どもと向き合っていけばいいのか、ご一緒に探究してみませんか。

第1章:時代が求める「力」の逆転現象

私たちは長らく、「試行錯誤のプロセスを省き、効率よく・ミスなく『結果(正解)』を出すこと」が優秀さの証だと信じてきました。
それは、かつての社会(工業社会)が、マニュアル通りに定型作業をこなし、確実な成果を上げる人材を求めていたからです。

しかし今は時代が違います。
OECD(経済協力開発機構)が未来の社会を「変化・複雑性・相互依存」というキーワードで表現しているように、私たちの未来はもはや過去の延長線上にはありません。

いま、世界は「VUCA(ブーカ)」と呼ばれる予測困難な時代に突入しています。
これは以下の4つの言葉の頭文字をとったものです。

  • Volatility(変動性):変化が激しく、
  • Uncertainty(不確実性):確かな正解がなく、
  • Complexity(複雑性):さまざまな要因が複雑に絡み合い、
  • Ambiguity(曖昧性):モヤモヤとして先行きが見えない。

このようなVUCAの世界では、社会に出た途端、誰も答えを知らない課題に直面します。
そこで求められるのは、すぐに結果を出すことではなく、自分で問いを立て、悩み、失敗を繰り返しながら自分なりの答えを導き出していく「プロセス」を歩む力です。

もし、子ども時代に「プロセスを飛ばして、効率よく結果だけを出すトレーニング」ばかりを繰り返していると、いざ「正解がない状況」に置かれたとき、どう試行錯誤していいか分からず思考が止まってしまいます。
かつての「要領よく、すぐに結果を出せる優秀な子」が、社会に出た途端に行き詰まってしまうという逆転現象が、あちこちで起きているのです。

第2章:大人の愛情からこぼれる「そんなことより…」という言葉

親であれば誰しも、子どもの将来が気にかかります。
日々の暮らしの厳しさを肌で感じているからこそ、「せめてこの子には、良い学校に行って、安定した仕事に就いてほしい」と願うのは、痛いほどよく分かる親心です。
同時に、学校現場に立つ教師もまた、「限られた時間の中で、効率よく知識を身に付けさせ、少しでも良い成績や成果を出させてあげたい」という強い責任感や焦りを抱えています。

そうした愛情や責任感ゆえに、子どもが自分の興味の赴くままに試行錯誤しているとき、そのプロセスを待つことができず、つい「そんな無駄なことより、将来のためになる勉強をしなさい!」と声をかけてしまった経験はないでしょうか。

でも実は、大人の目には遠回りや無駄に見える「そんなこと(プロセス)」の中にこそ、子ども自身の内側から湧き上がる知的好奇心やワクワクという、未来を生き抜くためのかけがえのない「ダイヤモンド」が隠されています。

第3章:プロセスを奪うことは、挑戦する機会を奪うこと

私たち大人が先回りして答えを与え、失敗しないように最短距離の道筋を整えてしまうことは、見方を変えれば、子どもから「自ら悩み、試行錯誤する大切なプロセス」を奪ってしまうことにもなります。
家庭でも学校でも、失敗しづらい環境は、挑戦しづらい環境でもあるのです。

「やってみたい」「知りたい」「なんでだろう?」

そんな内側から湧き上がる知的好奇心を起点に、試行錯誤を重ねる過程にこそ、失敗を糧にしながら自分なりの最適解を積み上げていくという「本当の学び」があります。
そして、その生きた学びのプロセスから獲得した知識やスキルこそが、正解のない未知の社会において、自分自身の可能性やポテンシャルを最大限に引き出し、未来を切り拓いていくための確かな術(すべ)となるのだと私は信いています。

第4章:「結果」を手放し、共に「プロセス(問い)」を楽しむ

だからこそ、私は家庭でも学校現場でも「と・ん・か・つ」の姿勢を試行錯誤しながら実践しています。

すぐに結果(答え)を与えずに「あなたはどう思う?」と問いかけ、親や教師も同じ目線で「ん〜っ」と悩み、子どもが自分の頭で考える時間をじっと見守り、広い世界へと興味をつないでいく。
この「と・ん・か・つ」は、まさに結果ではなく「プロセス」を愛し、大切にするための魔法の言葉です。

大人自身が「幸せの確率を上げるために、早く結果を出させなければ」というプレッシャーからそっと降りて、子どもと一緒に未知の問いに向き合うプロセスを面白がる一人の探究者になってみる。
そのスタンスこそが、子どもたちの知的好奇心を刺激し、変化の激しい時代でもたくましく生き抜くエージェンシー(主体的に変革を起こす力)を育む土壌になると信じています。

結び:結果の分からない道を、一緒に歩く

「すぐに結果が出ない」ということは、不安であると同時に、これからの未来を自分たちの手でいくらでも面白く創り出せるという希望のプロセスでもあります。

保護者や教育現場の皆さんが愛情ゆえに抱える「結果に対する不安」を少しでも軽くし、子どもたちの胸の奥にあるワクワクの火を、時間をかけて一緒に育てていけるよう、これからも学校と家庭、そして地域が手を取り合うエコシステムを創っていきたいと願っています。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。 Inquirers Base Okinawaから、また次回のコラムでお会いできるのを楽しみにしています!

「問いが、未来を動かす」。

この記事を書いた人

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