沖縄は「課題先進地」ではなく「問い先進地」ではないか?

みなさん、こんにちは。安里三矢子です。

前回は、私がこれまで歩んできたキャリアの中で見えてきた教育に本当に必要なものについてお話ししました。
そして、家庭でもチームでも「と・ん・か・つ(問いかける、ん〜っと一緒に悩む、考えるのを見守る、つなぐ)」の姿勢を大切にすることが、自分や周りの人の未来を切り拓く力(チェンジメーカーとしての力)を育むというスタンスをお伝えしました。

コラム第4弾となる今回は、私たちの足元である「沖縄」に目を向けてみたいと思います。
ともすれば少しうつむきがちになってしまう沖縄の現状を、私なりの別の角度から捉え直し、皆さんと一緒に「未来への誇り」について考えてみたいと思います。

第1章:「課題先進県」という言葉と、最新データが語るリアル

ニュースや新聞で、沖縄はよく「課題先進県」と呼ばれます。
「子どもの相対的貧困率が全国平均の約2倍」「県民所得は長年全国ワースト1位」。
数字だけを見れば、確かに私たちは非常に重い現実を抱えています。

先日、沖縄県から令和7年度の「沖縄こども調査(高校生調査)」の結果が公表されました。
そのデータを見ると、私たちの足元にある複雑なリアルが浮かび上がってきます。

過去10年間で、貧困線未満とされる困窮世帯の割合自体は減少(2016年の29.3%から2025年には21.4%へ)しているものの、昨今の物価高騰の影響もあり、「暮らしが苦しい」と感じる保護者の割合は逆に増加(44.9%から52.8%へ)しているそうです。

さらに、同調査で高校生たちが「国や社会がこどもたちのために優先的に取り組むべきこと」として挙げたのは、以下の内容でした。

  • 1位:「高校・大学までの教育を無料で受けられること(66.4%)」
  • 2位:「本当に困っているこどもの声にしっかり耳を傾けること(64.7%)」

「親に負担をかけたくない」という思いや、社会に対して「私たちの声をもっと聞いてほしい」という、切実で胸が締め付けられるような子どもたちのリアルな叫びです。

一方で、沖縄には全国トップの「出生率」という、希望に満ちた数字もあります。
多くの子どもたちが生まれ、活気にあふれているというエネルギーです。

この「貧困による暮らしの厳しさ」と「出生率の高さ」という、一見矛盾するような狭間で、私たちは日々生きています。

第2章:課題があるからこそ、切実で純粋な「問い」が生まれる

少し私の生い立ちをお話しさせてください。

私は、渡名喜島出身の父と与那国島出身の母の下に生まれ育ちました。
父や母が生まれ育ったような沖縄県内の小さな離島には高校がなく、進学を希望する子どもたちは15歳で親元を離れ、島外へ出て二重生活をしながら学ばなければならないという背景があります。

両親は「教育は身を助ける」という言葉を家訓のように口にし、私に学ぶことの大切さを熱心に教えてくれました。
そこには、離島で生まれ育ち、進学の時点で経済的・環境的な大きなハードルを越えなければならなかった両親自身の、切実な思いがあったのだと思います。

与えられた環境をただ嘆くのではなく、「なぜこうなるのか?」「どうすれば解決できるのか?」と、現状に対する問いを持ち続けること。
それが、私の教育者としての核となっています。

「課題」がたくさんあるということは、それだけ私たちの周りには「解決すべきテーマ」や「より良くしたいという強い願い」が溢れているということです。
社会の課題を他人事ではなく「自分ゴト」として捉え、「どうすれば変えられるだろう?」と知的好奇心やワクワクを持って向き合う。
課題の多さは、未来を創るための切実で純粋な「問い」を生み出す、豊かな土壌になり得るのです。

第3章:沖縄から育つ、未来のチェンジメーカーたち

実際に、教育現場で子どもたちと向き合っていると、その可能性の大きさに驚かされます。

浦西中学校で取り組んできた「プロジェクト型学習」では、以下のような活動が生まれました。

  • 生徒たちが沖縄の観光課題の解決策を提案
  • 地域の企業と連携して新しい特産品「紅いもム〜チもなか」を開発
  • 渋滞問題の解決に向けた映像を制作して社会に発信

彼らは決して「やらされている」わけではありません。自分たちの住む沖縄の課題に対して、「こうしたらもっと面白くなるんじゃないか?」「これならみんなが笑顔になるかもしれない!」と、ワクワクしながら知的好奇心を起点に問いを立て、大人たちと協働し、自分たちなりの答えを形にしています。

社会の課題に主体的に関わり、アクションを起こして変化を生み出す人のことを「チェンジメーカー」と呼びます。
沖縄の子どもたちは、この島が抱えるリアルな課題と真正面から向き合うことで、まさに未来のチェンジメーカーへと育つポテンシャルを大いに秘めているのです。

結び:私たちは「問い先進地」に生きている

「課題先進国」と呼ばれる日本において、ここ沖縄は「課題先進県」と位置付けられがちです。
しかし、視点を少し変えてみませんか。

「教育を無償にしてほしい」「私たちの声を聞いてほしい」と願う高校生たちの切実な声があり、多様な価値観が交差し、そして何よりたくさんの子どもたちのエネルギーに満ちているこの島は、未来を切り拓く力強い「問い」が次々と生まれる場所です。

そう、沖縄は「課題先進地」ではなく、日本中、いや世界中に先駆けて新しい解決策を模索し、
社会を前進させる「問い先進地」なのです。

出生率1位という希望と、貧困という現実。その狭間に立つ私たちだからこそ、生み出せる問いがあり、創り出せる未来があります。

どうか、この沖縄という豊かな土壌に誇りを持ってください。
私たち大人が率先してワクワクする「問い」を持ち、家庭でも職場でも「と・ん・か・つ」の姿勢で手を取り合いながら、子どもたちと共に「問い先進地」からの新しい波を起こしていきましょう。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。Inquirers Base Okinawaから、また次回のコラムでお会いできるのを楽しみにしています!

「問いが、未来を動かす」。

この記事を書いた人

目次